シリーズ『美味しいものたべたい』Vol.22。上富良野のトレードマークと言っても過言ではないのでは?地元民からも、訪日外国人からも愛される世界の「第一食堂」さんについて。
一見さんも どうぞ一歩中へ
一見して老舗食堂だとわかる面構え。
お店の前に立てば、外からでも漏れ聞こえてくる笑い声。
声の主はお客さん?店員さん?それとも両方?
醤油にみりん、砂糖にお酒が混ざったような匂いもただよってきて、とにかく、日本人ならお腹が空くこと間違いなし。
正直、こういう濃度が高そうなお店、初めてだとちょっと入りにくいですよね。
でも、ちょっと勇気を出して、年季の入った暖簾をくぐってみませんか?
コラムシリーズ「美味しいものたべたい」。今回は、私たちの上富良野町ランチの十八番「第一食堂」さんをご紹介します。
上富良野町にまつわるあれこれ
そもそもみなさん、上富良野町の位置はご存知でしょうか?
お恥ずかしながら私(カワノ)は、旭川へ引っ越してくるまで知りませんでした。
旭川から見ると、美瑛の南。車で約1時間。
富良野から見ると、北へ進んで中富良野のさらに北。車で約30分。
冒頭から完全に余談ですが、この富良野近辺の地名が、私にとっては結構不思議です。
だって北から、
上富良野町
中富良野町
富良野市
南富良野町
ですよ?
なぜ、「上」「中」と来て、「下」ではないのでしょうか?
また、なぜ「無印」富良野と「中」富良野が共存しているのでしょうか?
この命名が腑に落ちず、未だにこの富良野グループの位置関係がぱっと頭に浮かびません。
ちょっと調べてみると、分村や町村合併の歴史の中で、元々あった富良野村が上富良野村と下富良野村に分かれ、さらに上富良野村が分かれて中富良野村ができ、下富良野村が分かれて南富良野村ができ…と、裏には人間ドラマもありなかなかおもしろそうです。
しかし、これではいつまでたっても本題に戻って来れないので、地名については個人的に調べてみることとします。
ようこそ 「第一食堂」劇場へ
さて、少々強引ではございますが、本題「第一食堂」へ意識を戻してくださいね。
フリーペーパー「モトクラシー」Vol.6冬号にて、初めて掲載させていただいた「第一食堂」。
モトクラシーでは様々なジャンルのお店を掲載していますが、その中でも、ひと際異彩を放っています。
ややもすれば誌面の中で悪目立ちしてしまい、お互いにとってマイナスになってしまうかも…
そんな不安が一瞬頭をよぎったこともありました。
でも、ご安心ください。
第一食堂「劇場」は、緞帳(どんちょう)が上がったら、もとい、暖簾をくぐったら、もうあなたの心をがっちりつかんで離さないことを請け負います。
次から次へと繰り出される軽妙なテンポの会話からは、誰がキャストで誰が観客なのか、ぱっと見ではなかなかわかりません。
私自身は吉本新喜劇やドリフターズを見たことはありませんが、きっとこんな感じなんだろうなと自然に想像してしまうほど。
そんな、とにかく愉快で、どこか懐かしくて、とても温かいお店なのです。
地元はもちろん 海外からも愛される食堂
海外でミュージカルを観た時や、字幕なしの洋画を観た時、聞き取れない部分がどれだけ多くても、感動モノはやっぱり目頭が熱くなりますし、コメディはやっぱりお腹の皮がよじれます。
もっと言えば、幼い頃に観ていたミスター・ビーンは、ほとんどセリフなんてなかったけれどおもしろかった記憶があります。
第一食堂の皆さんをコメディアンと称するのはいささか怒られそうな気もしますが、彼らはそれくらい非言語コミュニケーションに長けていらっしゃると思います。
底抜けに明るい笑顔に笑い声、店内を満たす「歓迎していますよ」という空気。
そんな歓待を受ければ、地元の方はもちろん、海外から来た観光客の方だって、一気にファンになってしまいます。
一度はどうぞ 第一食堂のカツ丼
自他ともに認める…かはわかりませんが、流石「世界の第一食堂」。
心だけでなく、胃袋もお料理でがっちりつかんでくるのです。
モトクラシーの仕事をするようになってから、なぜかやたらと「カツ」をいただく機会が多くなった私。
だからといってカツに一家言あるわけではないのですが、第一食堂のカツ丼は、定期的にふと食べたくなってしまうほど旨いのです。
肉厚のとんかつも、旨味たっぷりのしいたけも、くたくたになった玉ねぎも、何か特別なものではないと思うのですが、全てがちょうどよくマッチしていて、これが本当に美味。
そこそこ量がありますが、どんぶりを置くのが億劫になるくらい、箸が休むことなく進む進む。
毎回気づくと器がほぼ空になっています。
カツ丼だけでなく、豚玉丼にラーメンにカレー、定食…と、メニューのバリエーションも豊かです。
でもなぜでしょう。毎回カツ丼を頼んでしまいます。
上富良野に来たら よってって
顔なじみになると、いつの間にか「いらっしゃいませ」が「おかえり」になっている。
そんな古き良き日本の食堂が、上富良野にあります。
昔の日常は今の非日常。
美味しいごはんも食べられて、ちょっとした劇場鑑賞気分も味わえてしまう。
そんなお店「第一食堂」の素敵な皆さんに、どうぞ、会いに行ってみてください。
あー、そろそろカツ丼食べたい。
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