シリーズ『お買い物したい』Vol.17。これさえあれば、一汁三菜ももういらない?食べ応え十分、旨さ十二分。日本人の身体にじわっと染み渡る、留萌(るもい)の美味しい漬物屋「田中青果」さんについて。
この漬物があればもう満足
一汁三菜。
和食の基本的な献立として、よく使われる言葉です。
具体的には、日本人の主食である「ご飯」に、「汁物」と3つの「おかず(主菜1品・副菜2品)」を組み合わせた献立を意味します。
この基本の献立をさらに引き立ててくれるのが、「香の物」。
ちなみに、香の物とは漬物の総称として使われる言葉ですが、香木の香りを楽しむ際に「たくあん」をかじって嗅覚を取り戻したことから、この名がついたのだそうです。
おもしろい語源ですが、なんだか気取った感じに聞こえるので、この文章では漬物といいましょう。
由緒ある引き立て役の漬物ですが、実は、副菜としては扱われません。
おかずを3品調理しながら温かい汁物も作り、冷凍ご飯をレンジにかけながら、さて漬物は何があったっけ?と冷蔵庫をごそごそ…。
そんな忙しいこと、正直毎朝してられませんし、夜だっていつもは面倒です。
今回は、この漬物があったら、もう「一汁一漬物」でいいんじゃない?と思わせてくれるほど、種類も豊富で食べ応えあり。
ひと噛みごとに旨さ染み出すお漬物を作っている、留萌の「田中青果」さんをご紹介します。
年に一度は行きたくなる土地 留萌
旭川は、北海道の真ん中あたりに位置する海なし地域。
一方の留萌は、日本海に臨む沿岸地域。
同じ北海道とはいえど、所管する振興局も違えば、気候も街並みも全然違う。
全くご近所感はございませんが、昨年深川・留萌自動車道が全線開通したこともあり、旭川~留萌間は車で1時間半ほどの距離となりました。
とはいえ、1時間半。決して「近!」とはなりませんよね。
それでも、年に一度くらいは、魚介類や海、お酒などなどの魅力につられて行きたくなってしまうのです。
留萌をさらに引き立てる 田中青果のお漬物
そんな留萌地域の魅力をさらに引き立てているお店が、JR留萌駅のすぐそばにあります。
名前からもわかるように、元々は八百屋さんだったという老舗漬物店「田中青果」。
二代目ご夫妻が試行錯誤を重ねに重ね、できあがったのが看板商品の「やん衆にしん漬け」です。
フリーペーパーの取材で伺った際、「どうぞどうぞ」と社長の奥様である美智子さんが、にしん漬けを始め、多種多様なお漬物を出してくださいました。
正直なことを申しますと、小さいころから漬物は不得手としてきた私(カワノ)。
盛られてきたのが「THE 漬物」というラインナップだったため、不安が顔に出ていないか、とても心配だったのを覚えています。
でも、仕事ですから。
何枚か写真を撮らせていただいた後、怖々とにしん漬けの一塊を口へ運びます。
……。
いや、なにこれ。
旨。
苦手としていた特有の「えぐみ」が全くなく、噛むごとに旨味成分が身体中に染み渡ります。
その美味しさたるや、「今まで私が食べてきた漬物は、実は漬物ではなかったのでは?」と頭が混乱するほど。
二代目ご夫妻が素材と向き合って、調合を何度も何度もやり直し、長い年月をかけて完成したこの味は、社長のおばあ様が作られていた漬物の味なんだとか。
にしん漬けを食べたことがない小学生が口にして、思わず「懐かしい…」と言い表したというエピソードにもうなずけます。
「日本人が美味しいと思うようにDNAに組み込まれた味」と言っても、過言ではないかもしれませんね。
漬物×カフェ×フルーツ×…
田中青果のすごいところは、漬物だけじゃございません。
なんと、カフェも経営しているんです。
カフェで出すメニューも、美智子さん自ら作っているというからまた驚き。
いつ行っても地元の方が寛いでいらっしゃることから、地域の憩いの場としても重宝されていることがうかがえます。
野菜ソムリエでもあり、唎酒(ききざけ)師でもあり、フルーツカッティングもできてしまうという、様々な顔を持つ美智子さん。
漬物を買いに、カフェで寛ぎに…だけでなく、美智子さんの元気なお人柄にひかれて田中青果を訪れる方も多いのでしょう。
雪が降る前、溶けた後。
道路状況のよい時期を見計らって、どうぞ、元気をもらいに留萌の漬物屋さんへ遊びに行ってみてくださいな。
留萌方面は、一度泊りがけで行ってみたいものです。地元でいただくお漬物とお酒と。
想像しただけでも最高ですね。
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